第11回 附.講演要旨集前言

特別講演

1.大阪 大形 徹「魂魄観念と鍼灸 ―人神をめぐって―」
2.京都 高島文一「膵臓の歴史」

一般口演

1.神奈川 吉岡広記「『千金方』における多壮灸について」
2.神奈川 千葉由美子「唐以前・孔穴主治条文における婦人科病證」
3.広島 大井康敬「『銅人粋穴鍼灸図経』の主治条文に見られる腹部症状」
4.神奈川 上田善信「『鶏峰普済方』所載の鍼灸について」
5.岐阜 宮川隆弘「『幼幼新書』の鍼灸について」
6.愛媛 寺川華奈「『乾坤生意』の鍼灸について」
7.大阪 木場由衣登「『神農皇帝真伝鍼灸図』について」
8.宮城 浦山きか「『黄帝蝦蟇経』と『吉日抄』『座右抄』」
9.東京 篠原孝市「路鍼流の鍼灸書について」
10.京都 岩田源太郎「江戸時代初期の鍼灸書に見る鍼の刺入深度」  
11.三重 杉浦 雄「『灸法要穴』所収灸法の典拠」
12.京都 鶴田泰平「『名家灸選』所収の『鍼灸五蘊抄』について」
13.茨城 荒木ひろし「石坂宗哲の営衛観について」
14.岡山 恒枝信三「蔵府・経脈の数について」
15.神奈川 家本誠一「経脈について(第三報)」
16.東京 荒野さやか「「脳」について」
17.京都 石川 剛「傍通表の変遷」
18.神奈川 竹内 尚「『素問』における身体部位について」
19.宮城 浦山久嗣「『素問』王冰注と経絡」
20.宮城 堀江 奨「『霊枢』経文中にみられる細字注の比較」
21.東京 高木伸博「『類経』と『素問』『霊枢』の字句の異同(第三報)」
22.大阪 山崎陽子「中風の鍼灸法について」
23.京都 中川俊之「隋唐期医書に見られる滑濇」
24.神奈川 平根弘治「『脈学輯要』と『脈学輯要評』の間」

講演要旨集前言 日本鍼灸臨床文献学会 篠原孝市「第11回学術大会にむけて」

1

 本学会の設立は1992年8月、様々な過程を経て第1回の学術大会を開催したのは、翌1993年3月のことである。この第1回大会を以て本学会の出発と見なすならば、2003年の今年、本学会は最初の10年の道程を終え、更に新しい10年の門口に立つ段階にあるということになる。これまで長い間、本学会ならびに学術大会開催を支えてくださった関係各位に、改めて心より御礼を申し上げたい。

2

 時間の経過の中で、現在では曖昧になっているかもしれないので、ここではっきり再確認しておきたいことがある。それは、私たちが本学会を始めた時まで、伝統的な鍼灸の医学、医学史、文献を総合的かつ専門的に論ずる継続的な場というものは、我が国ではどこにも存在しなかった、ということである。業界全般はもとより、様々な鍼灸の学術団体も、私たちが志向するところの<文献を介した伝統鍼灸の学理と歴史の解明>ということについては、関心を持っていなかった。これはあるいは現在でもそうかもしれない。こうした無関心の最大の理由は、文献を通じた伝統鍼灸の学術的研究と、現在の臨床的な関心との交点が見いだせないということにあるように思われる。しかし、私たちはそのような見解には組みしない。現在の臨床的関心を真摯に推し進めるならば、文献を通じた伝統鍼灸総体の研究に行き着くのは理の当然であり、そうすることによってしか、伝統医学としての鍼灸の臨床を展開していく道は無いと考えるからである。またこれとは別に、<実用>や<臨床>を単純に強調することで、<臨床>も<学術>も無にしてきたのが、これまでの伝統鍼灸の研究状況であったとも考えるからである。こうした観点から、私たちは<伝統的鍼灸の研究は古典文献の検討から始める>という単純素朴な地点に立って、私たちの学会を設立したのである。

3

 伝統的な鍼灸の問題は、なによりもまず鍼灸に携わる人々、鍼灸に関心を持ち続けている人々が直接関与して解いていかなくてはならないし、そのようにあることこそが現在の鍼灸に大きく寄与する。これが、私たちが学会を運営する上で最も根本としている理念である。この理念に基づき、伝統鍼灸の問題を恒常的に扱う場としての本学会を、更に一層発展させていきたいと思う。今後ともご支援、ご協力を心よりお願いする。

2003年11月22日
日本鍼灸臨床文献学会会長 篠原孝市

 大会日程:2002年11月22日~23日 大会会場:京都会館 会議場
主催:日本鍼灸臨床文献学会 後援:日本鍼灸研究会